突然の君の訪問。
僕はインターホンの音と彼女の声でウキウキと満面の笑顔で玄関に走った。
「久しぶりだね!!」
「そうだね。私も会いたかった」
彼女とは一年越しに会う。一年前に彼女の乗る駅のホームで「もう一度会おう」と約束したきりだった。
「今日は暑いね、部屋ん中クーラー効いてるから入って入って」
「ありがとう。…だけど、私ね、もういいの。あなた、もう三十歳手前でしょ?
仕事も見つかったんだ、って嬉しそうに言ってたし。だから私じゃない人見つけて、」
「なんで」
「僕になんの遠慮もいらないよ。仕事が見つかったのは確かに嬉しかったけど、何より嬉しかったのは一緒に喜んでくれた君だよ。君以外には考えられない」
「私はいつか消えるのに」
「は…」
「会うのはお盆の時期だけよ。あなた、本当は分かってたでしょ。
私も勿論悲しいよ。でも私じゃない誰かと幸せになって?ね?お願い」
僕は、拭えない彼女の涙を拭った。
_2023.8.28「突然の君の訪問」
8/28/2023, 12:20:53 PM