今年の抱負。それを聞かれても、すぐには答えられなかった。今年は変わりたい。今年こそ何かをしたい。そう思ってはいる。だが抱負を抱えるのはしたくなかった。努力を拒み、行動を拒み、安全圏に浸る。それが日常。そんなある日、友人と喫茶店に来た。僕は普段通りの会話をするつもりだった。しかし、友人から開口一番に言われたのは、[お前、また今年の抱負かけないんだろ。国語の授業でまた恥をかきたいのか?]
[……僕だって、書きたいよ。ででも……中々、決まらないんだ。考えても、考えても……うずくまるばかりで]
[まあ、いいんじゃねーの?今年の抱負だとか、掲げたはいいけど何もしなかった人類が何人いると思ってる?お前は自分にできない事を知っていたから、目標が立てられないんだろ?なら何もしない人類よりはよっぽどマシだと思うぜ。お前は目標がなくても、ちゃんとする人物だからな]
友人の言葉を聞いて、僕は原稿を完成させることが出来た。
三学期の国語の授業。僕は一礼をして、スピーチ原稿を読む。
[僕には、今年の抱負は思いつきませんでした。なので、今年は一生懸命に毎日を生き、精一杯の事ができるよう、努力をします。去年はうずくまるだけで、何もしませんでした。きっと今年もなんとなく一年を終えるでしょう。それでも、何かひとかけらの努力をしたい。せめて勇気を振り絞り、行動がしたい。それが出来るように、僕は一年をご過ごします。上手く言葉に出来たか自信はないです。でも、僕は頑張りますので、どうかこのスピーチでお許しを。ご清聴、ありがとうございました]
スピーチを終えて席に座る。その時友人と目が合い、微笑んでくれた。
休み時間、友人は僕の席に来て褒めてくれた。
[スピーチ、頑張ったじゃねえか]
[ありがと。僕なりに出来たと思う]
友人は一人呟く。
[努力するって、充分今年の抱負じゃねえか]
[何かいった?]
[いや、何も]
友人の声は、教室の騒ぎ声でかきけされたのであった。
1/2/2024, 12:52:50 PM