付き合って初めてのクリスマス、私はあなたに手編みの手袋をあげた。不精なあなたは衣替えのときに穴の空いた手袋を出してきたものだから、びっくりしちゃってね。真っ赤な、今思うと男の人に似合うかわからない、そんな手袋をあげた。それから初詣のときにも、バレンタインのときにもそれをつけてきてくれたね。
次の年、私はセーターをあげることにした。これであなたが暖かく冬を過ごしてくれたら、そしてそのそばに私がいられたら、そう思うと愛しくてたまらなかった。無意識に『糸』を口ずさむ自分に赤面もした。また真っ赤なものをあげたものだからあなたはちょっと困った顔をしていたけど、あのはにかんだ笑顔を今でも思い出せる。
幸せだった。
あなたの部屋にお邪魔したことがあったね。年も明けてまた寒くなって、雪が降ったあの日。あの手袋を見つけたの。穴が空いてた。別にそれで怒ったわけでもないし、不精なあなたらしいとも思った。でも、そんなものなのかなと思ってしまった。私自身も大切にしてもらえないんじゃないかなって、そう思ってしまった。手袋の穴を塞ぐぐらい、セーターを編んだ私にとっては造作もないことだった。でも、あのときの愛おしさを感じることはできなかった。
その日寒くて気分が沈んでいたとか、朝洗濯に失敗したとか、そんなところだったんだと思う。でもそのときからかな、あなたとの間に穴を感じるようになってしまったのは。
些細なことが穴を生んでしまうのではないか、そしてその穴を広げてしまうのではないか、不安に思ってるうちに、私は自分の心を塞いでしまっていた。そんな私にあなたも疲れてしまったのかな、穴はどんどん大きくなって、私たちの赤い糸で塞げるものではなくなっていた。
編み物を送る相手もいないこのクリスマスにそんな物思いに耽っている。
あの日塞いだ心は、まだ空いたまま。
11/24/2024, 1:28:36 PM