狼星

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テーマ:意味がないこと #358

「意味がないことをやっても仕方がないんだ!」
僕はそう言われてきた。
だから意味のあることしかやってこなかった。
勉強をして遊びになんか目を向けず、
部活では誰よりも活躍できるようにベストを尽くした。

「楽しくなさそう」
そんな僕を見て誰かが言った。
思わず僕はその誰かを睨みつけた。
誰かはクラスの女子だった。
ツンッとしていて本を抱えていた。
睨まれても動じていなかった。
「意味がないことをやっても仕方がないだろ」
僕は彼女の本を見て言った。
彼女の持っている本は妖精と書いてあり、
いかにも非現実的なものに見えた。
彼女はそれでも僕に動じず、じっと僕を見て口を開く。
「この世界に意味のないことなんてないわ」
……は? 何言っているんだ。
僕はそう思った。
「それじゃあ、あなたの言う意味のないことって何?」
彼女は続けていった。
それは!!
僕は口を開き言葉を発しようとしたが出ない。
意味のないこと……?
そう考えてしまったからだ。
僕はそのまま空を見つめていた。
何でだ。
非現実的なものを信じている者に悩まされるなんて。
「わからないなら、その硬い頭で考えてみれば?」
彼女はそう言って立ち去った。
その場に残されたのは
『意味のないこと』が分からない僕と
冷たくなった空気だけだった。

11/8/2023, 11:49:10 AM