テーマ:何もいらない #159
望まぬお見合い結婚の相手は
「何もいらない」と心を閉ざす女性でした。
そんなお見合いの相談が来たのは、
今から一ヶ月前。
結婚しない僕に急かすように
親がお見合いについて話をし始めた。
嫌な予感がした。
いつもはそんな話持ちかけることもないのに。
僕の気を察したのか、
隠すことなくお見合い相手の話になった。
お金持ちの地主の末っ子の子らしい。
それも、その子と地主に血縁関係はないとのこと。
その地主に言われたことだから断れないといった。
息子の断りもなく、縁談話が進むなんて。
そんなことを思ったものの、
親にも断れない。
もう進んでしまった話は仕方がないからというと、
親は安堵したように言った。
「じゃあ、話を勧めておくわね。明日準備してね」
明日……?
僕はその言葉にフリーズした。
次の日。
親に連れてこられたのは立派な美術館だった。
ここも地主の土地らしい。
一人の女性が誰かを待っているようだった。
真っ白なきれいなワンピースと黒いブラウスを羽織った人だった。
「こんにちは」
小さく挨拶された。
「あ、はい。こんにちは」
それが僕たちの出会いだった。
4/20/2023, 12:11:34 PM