金木犀

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 あなたのもとへ

 この学校に伝わるおまじない。図書室のとある本に手紙を挟んで棚に戻すと、相手がどこにいても必ず届く。ルールはひとつ。自分の名前も相手の名前も手紙には書いてはいけない。
 もちろん誰も信じる人はいない。そもそも「とある本」というのがどの本なのかもわからない。七不思議的に語られる馬鹿馬鹿しい噂だった。
 だから、こんな噂に縋る私もきっと馬鹿だ。だけどそれでもいいと私は「とある本」を探した。
 そして、見つけた。
『あなたのもとへ』
 きっとこの本だ。
 拝啓、遠くへいった君へ。
 手紙を挟んで本棚にそっと戻す。
 ふと我に帰ってその本をもう一度開くと、手紙は消えていた。

1/16/2025, 12:06:50 AM