「時を告げる」
薄暗い部屋の中、古びた時計が静かに時を刻んでいた。その音は、まるで過去の記憶を呼び覚ますかのように響く。主人公のアキラは、祖父から受け継いだその時計を見つめながら、思い出にふけっていた。祖父はいつも言っていた。「この時計は、ただの道具ではない。時を告げる者だ」と。
アキラは、時計の針が動くたびに、祖父の言葉を思い出す。彼は子供の頃、祖父と一緒に時計の修理をしたり、その歴史を語り合ったりした。祖父の温かい手のひらが、アキラの心に深く刻まれている。しかし、時が経つにつれ、祖父は旅立ち、アキラは一人残された。
ある晩、時計の針が12時を指した瞬間、奇妙な光が部屋を包んだ。アキラは驚き、目を凝らした。その光の中から、祖父の姿が現れた。「アキラ、時は流れ、思い出は消えない。君の心の中に、私がいる限り、時間は止まらない」と祖父は微笑んだ。
アキラは涙を流しながら、祖父の言葉を胸に刻んだ。時計はただの道具ではなく、愛する人との絆を結ぶものだと気づいた。彼は時計を大切にし、祖父の教えを次の世代へと伝えていくことを決意した。
時を告げるその時計は、アキラにとって永遠の宝物となった。彼は心の中で、祖父と共に生きることを誓った。
立花馨
9/6/2024, 8:14:03 PM