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「喋るお人形」

女の子は、お母さんと二人で暮らしていました。

お母さんは、本当のお母さんでは無くて、女の子の本当のお母さんは女の子を産んですぐに天国に行ってしまいました。お父さんは、今のお母さんと再婚しましたが、事故に遭って本当のお母さんと同じ天国へ行ってしまいました。

お母さんは、恋人を見つけてとても幸せな気分でしたが、血の繋がりの無い娘を目障りに思っていました。お母さんは、女の子を何とか痛めつけられないかと思っていて、友達から聞いた話の中に
「怖い人形を買い与えると地獄に追いやれる」
と言う話を聞いた出来事を思い出したお母さんは、女の子にお人形を買い与えました。

女の子は、「アバターゲームをやりたい」と、お母さんに言ってましたが、お母さんは「ダメに決まってるでしょ!」と、女の子に強く言い放ち、「家は貧乏だからお人形で我慢しなさい!」と、女の子にお人形遊びを押し付けました。

女の子は、お人形遊びを始めましたが、今の時代は、流行り病の影響があるのと、スマホゲームの普及でお人形遊びをする子供は殆ど居ません。お友達を誘っても誰も遊び相手になりませんでしたので、女の子は一人で遊ぶしかありませんでした。

「何でお人形遊びをしなきゃいけないの?お人形遊びなんて誰もしないよ?本当は皆と一緒にスマホみたいな機械のゲームで遊びたいのに…」女の子は泣きながらお人形遊びをしていると、「ご主人様は泣いてるの?」と、突然お人形が喋り始めました。

「お人形が喋った!」女の子は驚きました。「ご主人様、最近は誰も遊び相手になってくれなくて寂しかったの。ずーっと遊び相手になってくれる?」お人形は女の子にお願いをしました。「良いよ」女の子は、お人形以外遊び道具が無かったので、渋々お人形のお願いを聞くしかありませんでした。

家に帰ると、お母さんは笑顔で「新しいお父さんが出来るよ!」と、嬉しそうに女の子に報告しました。「それに、新しい弟か妹も出来るよ!」お母さんは、女の子に母子手帳を見せました。「良かったね。家族が増えるよ」お人形の立体映像が女の子の前に現れました。「お母さん、お人形の立体映像が目の前に居るよ」と、女の子はお母さんに言いましたが、「ハァ?お前、熱でもあんの?」と、言い返されました。

お母さんが寝静まった後、女の子はお人形に聞きました。「立体映像みたいに現れる事が出来るの?」お人形は「もちろん!だって、ご主人様は私の友達だからね」と、言いました。「授業の時は現れないでね」女の子はお人形に言いました。

お母さんは、新しいお父さんと再婚して妹が生まれました。お母さんは血の繋がった娘を溺愛して、お父さんも血の繋がった娘を溺愛しました。お父さんとお母さんは、赤の他人の様な血の繋がっていない娘を虐待し始めました。

女の子は、お風呂に入れてもらえず、食事も一日に白米を茶碗半分しか食べさせてもらえません。お父さんから毎日の様に殴られて、お母さんは些細な事でもキツく怒る様になりました。

女の子の家族は、幸せそうな家庭だなと思わせる様でしたが、女の子だけは中世ヨーロッパの貧しい乞食を思わせる様な身なりでした。女の子の親は、学校の先生や近所の大人に「うちの子は変わり者で、お風呂も嫌いだし、好き嫌いも激しいんです。それに引っ込み思案で…」
と、子育てに困ってる様な素振りを見せていました。そのせいか、周囲の大人達は誰も女の子を助けませんでした。

女の子は、泣きながら「死にたい」と、呟きました。お人形は「じゃあ、死ねば?」と、女の子に言いました。「お前、前世で私をイジメてただろ?私は、お前のイジメのせいで友達も家族もみーんな失った。お前に私の辛さを味わってもらってたんだ。今度はお前が死ぬ番。死ねよ!」お人形は女の子と同じ大きさになって、女の子を線路に突き落としました。女の子は、電車に轢かれてあの世に行きました。

お人形は、女の子の人生記録を見て「あ、間違いだった。コイツ同姓同名の別人じゃん」と言い、どこかへと消えて行きました。「本物、何処行った?!」ちなみにお人形が探している人物は、お金持ちの家に生まれ、人生のエリートコースを歩み、友達も多く、恋人にも恵まれる何不自由無い幸せな人生を送っていました。

お人形が目的を果たせる日は果たして来るのでしょうか…?

1/19/2022, 10:33:22 AM