七紫

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秋恋。
春恋も夏恋もあるなら、
秋恋もあると思う。
春夏秋冬恋の季節だから。

秋は二学期の始まり。
新しい出会いも待っていると考えてる。
そして今日は中間テストの2週間前。

部活動がテストによって中止になったり、
課題が増えたり、体育祭間近だったり、
とにかく忙しい9月下旬。

窓の外にはキンモクセイの木が見える。
登校時にはキンモクセイの匂いを嗅ぎながら校門をくぐる。
もうすっかり秋の匂いだ。

まぁでも、暑さは8月下旬とあまり変わらないけどね。


「四宮ー」
「あっ、はい!」
「これ持ってきて」
「あっ……はぁい、」


はぁ…授業は全く分かんないし、
このままじゃ中間もまた補習だなぁ。


「四宮今日居残りな。」
「はぁ??」
「どうした?
 それ分かってて寝てたんだろ?」
「いやいや、テスト期間ですよ!?」
「それは関係ない。
 部活休めるからいいんじゃないのか?」
「ま、まぁ…それは…」
「じゃあ待ってるぞ。3階のBRで。」


もう居残りはいやだなぁ…
というか、前見えないんですけど。
どれだけ積み上げたんだよ、
あのてぃーちゃーは…ったくもう、


ドンッ

「んわぁっ!」

バササバサッ

「あ~……番号順だったのにぃ…
 番号順なんて覚えてないってばぁ~」
「四宮さん?」
「え?あーはい、」
「やっぱり!
 今日は俺も居残りだから!よろしくね!」
「えっ?」


そう言って紙を集めるのを
手伝ってくれた彼は、
同じクラスの一番前の席・先生の
目の前の席に座る、香林(カオリバヤシ)くん。

全ての紙を番号順に重ねてくれて、
渡された時、手元から金木犀の匂いがした。


「えっ、」
「ん?」
「キンモクセイの匂いがしたから…」
「姉ちゃんに貰ったんだよね。
 キンモクセイのハンドクリーム。」
「キンモクセイは匂いが好きだからさ、
 先生にバレない程度に塗ってるの。」
「へぇ~…、」
「でも今日バレちゃってさ。
 居残りだって。なんでこれだけで…」
「…お花嫌いだからねあの先生。」


"じゃあね"と言い残して廊下を歩いていった。
キンモクセイのハンドクリームを塗っている、あなたの手元に惚れたようです。


でも、その手元は他の女性のもので、
私の秋恋は終恋に変わった。



112テーマ【秋恋】

9/21/2023, 11:13:30 AM