風の匂いの思い出

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雨に佇む



教室の窓から雨が降っているのが見える。

かなりの土砂降り

傘、持ってきてないんだけどな…

天気予報では雨が降るなんて言ってなかったのに。

夏だから仕方ないかな。なんて考え事しながら外を見てたら先生に当てられた。

あぁ、最悪。雨も降るし当てられるし、ついてない!!


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ホームルームが終わって、下校の時間。

さっきより雨の勢いはマシになったけど、傘無しで帰るのは嫌だな。濡れるし…

と思い昇降口で雨が止むのを待つけど、なかなか止む
気配がない。

今から帰るであろうカップルは、仲良く相合い傘をして帰ろうとしている。

はぁ…こんな雨の中でも相合い傘して帰ると気分上がるのかな?なんて心の中で思う。

このままじゃ帰れないかもしれない…そう思って俯いていると

『おい』

後ろから声をかけられた

振り返るとうちのクラスのイケメンで人気者がいた

な、なに??急に声かけられたんだけど。
私なんかした…?
頭の中がプチパニックでいると、

『傘ないの?』

そう聞かれた。

同じクラスではあるけど全然話したことがないから、目を合わせられずにオドオドして

「あ、うん。傘忘れちゃって…。」と答えると

小さくふぅーん、と言う声が聞こえた後、

『じゃあ、傘貸すよ』

そう言って私に黒い傘を渡してきた。

え?とびっくりしていると

『俺、家すぐそこだし、これくらいの雨慣れてるから。
俺サッカー部じゃん??雨の中でも練習してるから、傘無しでも全然平気』

と言ってきた。

え、でも…そう言いかけていると、彼は走っていった。

「え、ちょっと待って!!!」

そう言うと振り返って

『明日返してくれれば良いから!』そう言いながら帰っていった。

え、本当に貸りて良いのかな、と考えている間に彼はどんどん遠くなる。

走っても追いつかなそうだし…

私は彼の大きな背中に向かって

「ありがとう!!」と叫んだ。

彼に私の声が届いたのか後ろ向きだけど手を振ってくれた。

冷たい空気とは反対に、私の心は温かくなった。

8/27/2021, 2:00:24 PM