今日の空にはいつもの青はなく、代わりに灰色で埋め尽くされていた。ただ、どんよりと曇っていた。教室に残る2人の時間がゆっくりと流れる。
「お前はさ、いつも曖昧だよな」
「どこがよ。私はいつもハッキリしてるわ」
「そうか?俺にはそう見えないけど」
彼女は物事をハッキリ言うタイプであり、強気で男勝りな性格。
そんな彼女にひとつだけある、俺しか知らない「曖昧な部分」を知っている。俺が知っているそれを彼女は知らない。
俺が知ってる時点で俺の勝ちだ。
「で、アンタいつまでもそこで寝てていいの?私、もう帰るけど」
「ちょっと待て、今日、一緒に帰ろう」
「…はいはい、早くしなさいよね」
「そういえばさ、俺のことを好きな人がいるんらしいんだけど」
「…そう、誰?」
「俺は知らない。まあただの噂なんだけど。みんな隠すんだよ、そういう大事な部分。曖昧だよな」
「曖昧、ね…」
「…それね、私のことよ」
「……知ってた」
ほらな、お前は曖昧だ。
_2023.6.14「あいまいな空」
6/14/2023, 10:01:18 AM