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初恋の日


中学一年生の時
クラスメートSが気になった。
幼稚園から小学校までずっと一緒のS。

特に仲がいいわけではなかったが
クラスもずっと同じだった。
今年もクラス一緒か。ぐらいの気持ちで
特に好きとか何も考えない存在。

中学に入ってクラスメートから
お前たち付き合っているだろうと
うわさを流されからかわれた。
何を根拠にそんなうわさが
出たのか全くわからない。

思春期の幼い中学生たちの
些細な異性への興味がたまたま
私とSをターゲットにされたのかもしれない。

それがきっかけでSのことが
気になり出した。

野球部のS。
テニス部の私は、グランドのとなりの
テニスコートからSの姿を目で追ってしまう。
Sがどんなやつか。
13歳の思春期の女の子は、
好きという気持ちにちょっとずつ
変わっていく。

Sもたぶん私を気になっていたと思う。
偶然、部活の帰りにすれ違う時、
じゃあな。とか、お疲れ。とか
声をかけてくれるS。
お互い告白するわけでもなかったけど
たぶん、これが私の初恋。

親の仕事の都合で私は、中学二年生に
なるときに転校した。
初恋は、これで終わり。

25年ぐらいたち、転校した私にも
同級会のお誘いがきた。

結婚した私も初恋のSに
会えるかもしれない。どんな感じの
大人になったかな、少しわくわくしながら
同級会に出席した。
しかし、Sの姿はなく、同級生の話しで
Sは、病気で亡くなったと知った。


悲しいとか寂しいとかそうゆう気持ちより
先に中学生の頃のグランド、テニスコート
教室、クラスメートたちの声が
一瞬に脳裏に浮かんだ。

「じゃあな。」Sの声が聞こえた気がした。

5/7/2023, 2:38:15 PM