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12の書かれた四角

そこには赤いペンで‪✕‬と記されている

そこまでの四角にはきっとその日を生きたという証の✓の印

「11日が終わっちゃうね」

「うん。そうだね」

こんな乾いた会話があるだろうか

僕は今この瞬間、この時にしか吸うことは出来ない空気を肺いっぱいに溜め込んだ

憎いぐらい綺麗な夕焼けが
まるで頭の中にラミネートされていくように
こびりついて、離れなくて

「君は将来何になりたい?」

「まず、将来があるかも分からないよ笑」

君はそう笑った

「そっか、笑」

僕に笑った理由はない
ただ、なんとなく笑った
僕は分かっていた

「明日は何をする?」

「明日、ねぇ、笑」

「僕は君とまた会いたい」

「会いたい、かぁ」

「うん。会いたい」

君がもし、明日を生きるとしても
会える保証はどこにもない

「明日、必ず会おう?」

「会えるかなぁ笑」

ただの偶然なのか
それとも何かの運命なのか

僕たちが出会えたのは何故なのだろうか

「じゃあ、また明日」

「…うん、また明日」


____________

11日だ

明日から学校が始まる

いつものようにスマホをいじりながらベッドに横になっていた

眠るのが怖かったから
正確には明日が怖かったから

「明日か、笑」

私は眠りについたみたいだ

目を開くと君がいた

「11日が終わっちゃうね」

私は戸惑いながらも「夢」だと確信した

綺麗な夕焼け
高い屋上

そんなところ自分の住むところにはなかったから

「うん。そうだね」

君は誰?と聞きたいのをうんと堪えた
聞いたらもう話せないと思ったから

所詮夢だし奇跡が起きないともう会えるわけないのに

君は「会いたい」と言った

私は明後日には居ないのに
必ずなんて言わないで

私たちは何故会えた?

君は一体何?

私たちまた会えるのかな…笑
死にたがりの私のくせに

少しでもそう思ってしまった

9/11/2022, 12:59:44 PM