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踊るように

踊るように生きるのね、と言ったら、彼女は違うよと笑った。
私は泣きたくなった。泣き顔が不細工だから泣けなかった。
負けている、笑顔も泣き顔も。何もかも全て負けていた。彼女はよく泣く子だった。きっと死にたいと思ったことのない大衆側の人間だ。毎日死にたいと思いながら、よく泣くあの子のとなりで泣けなかった。泣き顔を気にしてだった。
彼女はいつも舞踏会にいるかのように輝いていて、嫉妬も何も知らず、美しかった。スタート地点の違う人生で、私は、私は。

踊るように生きていくのでしょ。と言ったら、彼女は困った顔をした。彼女にそんな顔をさせたことを申し訳なく思った。そう思わせるような子だった。

9/7/2023, 5:20:52 PM