海月

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#2【子供の頃は】


「先生に言うよ!」

お前の口癖だったよね、と
隣の男は笑う。

あの頃は正義感が強くて
ついでに責任感も強かった。
一人っ子だった私は
何かを任されるのが嬉しかったし
お世辞を素直に受け止める純粋さもあった。

今の私は、同窓会の幹事になることさえ
鬱陶しくて、めんどくさい。
知識と経験は、時に人を堕落させる。
20年の時を経て、漸く気付くのだ。
遅い。遅すぎる。

それでも、あの頃のイメージは
彼らの中に不思議と残り
当たり前のように託される。

子供の頃の自分を
大人の今は恨んでいる。
なぜあんなに張り切ったのだ。
みんなをまとめるな。何年も苦労するぞ。

「お前が俺らを忘れても、俺らはお前を覚えてるよ」

めっちゃ怖かったし、と
男はまた笑う。

誰のせいだよ、という言葉は
冷えたモスコミュールで流し込む。
もう告げ口出来る先生はいない。
覚えていてくれるなら
多少の面倒も引き受けようじゃない。

こうやって5年に1度
お酒を飲んでくれるなら。

6/23/2023, 12:18:09 PM