花中流

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善悪


 予報を裏切った快晴の下、ひらひらと舞い散る桜が綺麗で、意図せずとも笑っていた。
 散歩がてらの花見も悪くない。
 近所の小さな公園の並木とは言えない数でも、美しいものは美しい。
「嬉しそうだね」
 手を繋ぎ、隣りで歩く彼も笑う。
「うん。やっぱり桜はいいよねー、外に出てよかった」
「そっか。——でもさ、そこ見てみなよ」
「ん?」
 そこ、と指差された箇所を見やる。
 昨日までの雨に打たれて落ちてしまった彩りが、数多の靴底の世話になり、哀れにひしゃげて溜まっていた。
「ああやって踏まれて汚れてさ。そうなるともうゴミみたいに見えるんだよね」
 無邪気かつ爽やかに。私に向けたものと変わらぬ顔で、相変わらず彼は笑う。
 見方を変えれば、即座に。
 それは変わってしまうのだ。
 
(2023.4.26)

4/26/2023, 10:54:05 AM