Seaside cafe with cloudy sky

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【子供のように】← change order【秋晴れ】

◀◀【お祭り】からの続きです◀◀

⚠⚠ BL警告、BL警告。誤讀危機囘避ノタメ、各〻自己判斷ニテ下記本文すくろーるヲ願フ。以上、警告終ハリ。 ⚠⚠




















油断を突いたゲーアハルトのジョークはジワジワきて、しつこく込み上げてくる可笑しさと格闘しながらアランは口もとへ緩い片手握りこぶしをあて喉を整える振りで、なんとか平静を装って丁重に言葉を返してみせた。
「 ――そういう名目では謹んで辞退させて頂きます、僕はエルンストくんの賢明な判断による助っ人としてほんの少し携わっただけなんですから。ですが、ただの楽しいパーティーなら喜んで出席しますよ。マルテッロさんの快復祝いとかならば、ぜひ呼んで頂きたいですね」
「ああ、それ良いっすね!チーフの快復祝い、やりましょうよ専務、俺とエルが幹事します。ジュノーさんは賓客でご招待しますから絶対来てください!」
賓客、ね。大乗り気に発言したジャンルカの言葉から、奇しくもここへ到る途中アランが飛ばしたジョークに出てきた同じ言葉を拾って、ゲーアハルトがまたもアランの耳もとでつぶやき思い出し笑いにクスリとくだけた顔を向けた。つられてアランも、被っていた紳士の猫を脱ぎ出して素顔を見せはじめたシャム猫専務に肩をすくめてさり気ない笑顔を返す。どうやら彼にはジョーク好きな一面もあるようだ。知らなかったな、気が合うかも。
「よろしい、許可しようジャンルカ。エルと相談して提案書を提出しておきなさい」
やった!!グラツィエ、専務!すっかり中身の無くなったミカドの空箱を持ったままジャンルカがガッツポーズする。みなも嬉しそうに顔を見合わせて、もうあれこれとパーティーの楽しい相談を始めているようだ。暖かくなる頃にできれば良いねとか、持ち寄って屋上でやんない?とか。しかしすぐにゲーアハルトの手を打ち鳴らす音で中断となった。
「―― さあそれでは諸君、そろそろ息抜きは切り上げて労働の義務を果たすとしようか。だがその前に……ジュノーさん。彼らにあなたのことを説明しても構いませんか?相互理解を結んでおいた方がやりやすいのではないかと思いまして」
え、ジュノーさんの説明?専務の意外な言葉にみなキョトンとした。アランのことは今日偶然巡り会っただけの素敵なお客さんだとしか認識がない彼らなのだから当然の反応と言えよう。そんな無関係だと思っていたアランが何の説明もなくいきなり自分たちの事務所のパソコンを何台も使い出したら、いくら人の良いここの人たちでも違和感を覚えて眉をひそめること必至だ。もっともなゲーアハルトの意見にそうですねとアランはうなづき、
「説明は僕からさせて下さい。ちゃんとした自己紹介もまだでしたしね」
笑顔でそう言ってゲーアハルトの気遣いを遠慮した。そうですか、ならばお願いします。とゲーアハルトも出過ぎることなく静かな笑みで引き下がってくれたので、アランはポカンと佇むみなの前へと向き直り一歩進み出た。 ―― さてと。ご厄介になるんだから真面目に説明しないといけないな ―― そう考え、クセで無意識につい前髪を掻き上げてしまいながら話し出した。
「あらためてみなさん、先ほどは挨拶もそこそこで……」
早々に失礼してしまいすみませんでした ―― とさわやかに続けるはずだったが、なんの心の準備もしていなかった残業社員一同にアランの野暮ったい前髪の下に隠していたレア級イケメンを唐突にさらしてしまったがため、まるで全身を雷に撃たれたような衝撃を受けて驚愕した彼らから興奮したコメントを矢継ぎ早に浴びせられ、思わず怯んで硬直したアランは先を続けることができず立ち尽くすのだった。
「 ―― そ……そんなイケメンだったんすか、ジュノーさん!!」
「キャアアアアーーー!やっぱり素敵!!でもなんでお顔隠してるんですか!?イケメン隠匿罪に問われますよ!」
「いや、野暮ったいからの超イケメンバラしなんて反則でしょう!ギャップ萌え効果、半端ないんですけど!!」
「 ―― だから女子たち騒いでたのか……全然気が付かなかった、千里眼なのかよ、あいつらって……」
「写メ、写メ撮らせて!それから一緒に写メ撮って!!」
「ねえ眼鏡も外してみてよ、お願い!!」
ゲーアハルトも初めて見るアランの前髪全開の素顔に仰天し、シャム猫の顔で息もせず固まっていたが、専務としての責任感から騒然となった事務所の秩序を取り戻すべく気を取り直し、たじたじと防戦一方のアランに群がる社員たちをなだめるため彼らのあいだに割り込みアランを背後へ庇って立ちふさがった。
「そこまでだ紳士淑女の諸君、普段のたしなみはどうしたのかね!いくら驚いたからといって、恩人でもある大事なお客さまに品のない振る舞いをしてしまうとは嘆かわしい、見ていて悲しいぞ」
まるで教師のように注意する専務の言葉を聞くとようやくみな我に返り、こちらも生徒のように大人しくなってしょんぼりとした。くわえて冷静な諭しに恥じ入ったようで、すみませんでした、ジュノーさん ―― とみな口々にしょぼんとしたまま素直な謝罪を告げてくる。その様子がなんだか幼い子供のようにいぢらしくて微笑ましく心なごみ、アランはどういたしましてとホッと安堵の笑みを浮かべながら言葉を返した。
「いえ、みなさんを驚かせてしまったのは、僕の、その……なんというか……迂闊さ?が原因なので、お互いさまということで気になさらないで下さい。それでは ―― 」
ようやく事態が収束し本題の説明に戻ろうとしたそのとき、アランのスマートフォンがジャケットのポケットで電話の着信音を鳴り響かせた。話しの途中だったが失礼してスマートフォンを取り出し、誰だろうと着信画面を確かめて見ると、表示されていた番号に思考が急速冷凍され、鳴るにまかせてしばしアランは死んだような眼差しで画面を見つめた。

▶▶またどこかのお題へ続く予定です▶▶

10/18/2024, 10:30:12 AM