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「この曲名前なんだっけ」

曲?ああ、曲か。誰もが一度は聴いたことのある洋楽。リビングでぼんやりと、見てるわけでは無いけど消さないテレビに流れるCMのBGM。一瞬、題名なんか無いだろと思ったがそんなわけない。どんな曲にも名前はある。多分。

トゥモローランド、じゃなくて、トゥルーラブ、じゃなくて…

「とぅもろー…らぶ」

「ラブ・トゥモローだ」

まるで自力で思い出したかのように口ぶりで。そう、それ。

「"本当の愛"って日本語あってる?」

「何の話?」

怪訝な顔をちらりとこちらに向ける。そうだった、とぅもろーらぶにたどり着くまでの単語を口に出してはいない。

「愛なんて本当しかないのに、そんな表現したらまるで愛は基本偽物みたいな」

「…どっちがベースかはしらんけど、偽物もあるでしょ。ホストとかキャバクラとか」

「それは最初からビジネスだからそもそも愛じゃない」

「浮気とか不倫とか?」

「それは…本人達は真剣だから本物なんじゃない?」

「へぇ」

あ、まちがえたかも

「確かにね、むしろ本当の愛かもね」

「そういう人達が自分達を肯定する為に作った言葉かもねぇ、こっちが本物だって思いたくて」

「ふうん」

納得してるんだかしてないだか曖昧な感じで頷かれる。

「愛に対して本当だ偽物だってジャッジした瞬間から、その人達も信じ切れてないのかもしれないね

信じられないから、相対的な見方をしてるのかもな」



「じゃあSecret loveって言ってくれたほうが良いね」

「…どっちみち当事者が言うのは良くないかもね」

9/3/2025, 11:48:20 AM