森を走り抜ける中、カーン、カーンと鐘の音が聞こえる。どうしてだろう?この近くには教会なんてあるはずないのに。まだ、カーン、カーンと鳴り止む気配はない。そんな中私は走り続ける。はやく、早く抜けなければ。【アイツ】がやってくる。私を眠らせる悪夢が。クライ森の中走り続けた。しかし、出口は一向に見えない。なんで、神は私を見捨てたの?嫌だ。悪い子だから?何もしてないのに?!カーン、カーンと鐘の音は止まない。私は出口が見えずに走る。もう、何時間も逃げ回ったのだろうか?しかし、思考を遮るかのようにくだらないことが頭の中をよぎり始める。しばらくすると、森が開けてくる。その先には教会らしき建物が見えてきた。私は急いでその中に入る。
教会の中に入り、落ち着いたところで、改めて中を見る。草は生え、椅子はボロボロになり、神像にはツタが絡み付いている。その後ろに立つ十字架はそれらに比べ比較的綺麗であった。私はその神像に導かれるように体が動き出す。そこで私の意識は途切れた。
彼女は、神像に手招きをされたかのように一直線で向かっていく。神像までの距離が半分を過ぎたあたりから、彼女は魂が抜けたようにうなだれながら神像へ向かう。神像の前に来るやいなや、彼女は祈り始める。
「神よ、見ていますか。私は、あなた様に選ばれしもの。あなたの望みは私の望み。イア・イア。どうか、お姿をあらわにナサレテ。イア・イア」
そんな言葉に神は応じない。しかし、これはいかにも可愛そうだ。まともな呪文でもない。しかし、神は答えた。その姿はこの世界の全てだった。彼女は手を大きく広げ、広角を上げ、大声で突如笑い始める。そして、次の言葉が彼女の最後だった。
【夢から覚める! 終焉の時を! 今! 人類史はやり直しを迎える!】
彼女は目から黒い涙を流し、笑う。笑い続ける。どんな苦痛だろうと、どんな痛みだろうと笑い続ける。カーンと一回鐘の音の祝音が響き、木霊していた。
8/5/2023, 2:30:04 PM