妄想と戯言

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「もうやめてくれ。もうこれ以上、俺を惨めな気持ちにさせないでくれ」
三上は嗚咽で胸の奥がぐっと痛くなるのを堪えながら言葉を絞り出した。
目の前には、三上が昔ひどく傷つけた相手の慈愛に満ちた表情がある。佳澄はその表情のまま、何も言わない。

こいつの「普通」を奪ったのは俺なのに――
それなのに。佳澄はまるで壊れ物を扱うかのように優しく丁寧に三上に触れるのだ。
三上の犯した罪を、その大きな手でまるごと包み込むかのように。

ひどく乱暴にしてくれれば、こんな苦しい思いもしなくて済むのに……。
佳澄は、三上の左頬を流れる涙を親指でゆっくりと拭った。

「やさしく…しないでくれっ、お願いだから……」

5/2/2023, 3:45:57 PM