月穂

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高校時代、
いつもより早く教室についた朝。

後ろの席の女の子が、
一人静かに泣いていた。

「どうしたの?」とたずねると、
「彼といま、お別れをしたの」と返答があった。

ジブリのような、大粒の透き通った雫が
次々と頬を伝っていた。

こんな風に人は泣くものなのかと、
まだ人を好きになる感情を知らなかった私は、
不思議な感銘を受けたことをよく覚えている。

その子は悲しい涙を流しているのに、
その感情を知らない私は、
羨ましさのような気持ちさえ、感じていたのだった。



#雫

4/21/2023, 10:24:00 AM