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夜の海、貴方と遠出をした夏休み。
「暑くないんですか?」
夜とはいえ酷暑といわれる日。ハンディファンを持った私に話しかける。
「暑いです」
貴方は静かに私の隣に座る。お盆の真っ只中、帰省の予定はなかったのだろうか。
「家帰らなくて大丈夫ですか?」
「大丈夫です。私がどこで何してようが気にしない人達なんで。」
吐き捨てるようにそう言い貴方は二本目のエナジードリンクを流し込む。
「そうですか」
サンダルと靴下を脱いで、浜辺に向かう。貴方は不安げに私の名前を呼ぶ。
押して返す波。
くるぶしまで濡れた足先。濡れるのも気にせず海に入る。
ぬるい水温、大きく聞こえたバイクの音。
「行かないで!」
ひときわ大きい貴方の声。思わず足を止めた。振り返れば目に入る、貴方の潤んだ瞳から涙がこぼれ落ちた。
「大丈夫ですよ」
珍しく泣きじゃくる貴方を宥めるように頭を撫でた。
「遠いとこ行っちゃうかもって思って、怖くて、それで」
しゃくりあげながら必死に伝える。
「大事だから、どこも、行って欲しくなくて」
「うん」
そっと貴方を抱きしめた。
不安にさせてごめんね。
大好きだよ。

8/15/2023, 12:08:31 PM