汚水 藻野

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「…あんたさぁ」
「はい!!」
「…この季節とこの雪山でそんな薄っぺらい格好してきて馬鹿なの?」
見てるこっちがサムいんだけど、と付け加えて顔をしかめると、目の前の少年は「えへへ」と呑気に笑った。
「雪降ってるかなーって!
雪だるまつくーろー、的な!」
「ここじゃ、今の冬の季節じゃなくとも降ってるよ、雪は。」
ぼくが見たくもなかったあの雪山が、少しずつ克服している。その事実に驚く自分がいたのを思い出した。

にしても、なぜこの少年は半袖短パンで平気なのだろうか。年中そういう小僧いたけどさ。
「…あんたは灯火みたいな類だから、平気なのかな」
「え?なんか言いました?」
「…いや、なんでもない。それよりサムいから早く中入りな。」
早く、とジェスチャーすると、うるさいほど元気な声で、「ありがとうございます」とお礼を言われた。
「あ、そうそう。
雪が降ってない理由、分かったよ。
太陽だ
あんたが いる からだ。」

ふわりと笑って見せれば、顔が真っ赤な少年がいる。
「ふは、やっぱり太陽みたい。」
「いつからそんな笑えるように…!?」
少年
この雪山に 太陽 が来たからには、もう雪が降る事はきっとない。
次に雪が降るのは、いつだろう。

_2023.12.15「雪を待つ」

笑わなくなった彼の心の氷が、とかされた。

12/15/2023, 11:56:03 AM