「楽園」なんて大層な世界、
俺なんかが行けるはずがない。
運動も勉強も容姿も、秀でたものは何も持ち合わせていない。これは幼い頃から変わらず、今も尚。
生きることに緩やかに絶望している。
いつでも、この生温い地獄から逃げ出そうとしている。
しかし、いずれ気づくことになる。
今、俺の目の前に広がる光景は、
―――朝日の眩しさと台所の騒音に目を覚ます。
―――焼けたパンとバターの匂いが心地好い。
―――君が俺の毛布を剥がした。
―――「一緒に食べよう」
正しく楽園だった。
4/30/2024, 4:42:05 PM