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最初から決まってた。何をしても無駄と。だから最後まで宙ぶらりんなのだ。

ある日、母は私にこう言った。
「あら。いたの。」
なんの気ない一言だったと思う。実際、なんの意味もない一言だ。それでもその一言は、私の胸には黒鈍くのしかかった。

それより幾日か前、私は道端に落ちた鳩を見た。死んだそれの目は脆く、只〃そこに落ちているだけだった。しかし、そんなモノに私はどうしても惹かれてしまうのだ。

それよりずっと前、初めて人と交えた。薄く伸ばされた様な肌に手を重ね、波打つ髪を抱きしめた。
「このまま殺してくれ」 と、切に願った。

ある日は西登る竹分けの日であった。祖母の連れた小熊と一緒に、悴んだ弟の手を飲み干した。ひの屋に横たわった藁を、私はこうして首にしめている。

あぁ。なんとも。では、また。

8/8/2023, 8:12:56 AM