透明人間

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終点とは近くで鳴り響く音が止まるときである。
終点とはエンドロールが終わるあの一瞬の感動であり、シャープペンを走らせたときに呆気なく折れて途絶えた線のようである。
終点と言ってしまえば遠いように感じるが、案外身近に隠れている。
生きるとは、生物として「息」をして、自分としての自我で居ることをやり切る。「居切る」とも思えてくる。生とは、長いようでいて短いとよく言うが、最期に何を思うのだろう。
終わってしまう暑さと蝉の鬱陶しさと恋しくなる鈴の音のようなのだろうか。
触れれば火傷しそうなココアと寒々しい空のようなのだろうか。
美しい光と植物に囲われ生と死を思わせる暖かさ、それとも美味しい食べ物を分け合う嬉しさと見上げても微笑みが少なく、気分が晴れないものなのか。
僕はずっと終点に夢を見ている。
恋に恋するように、僕は終点というものに子供のような夢物語を描いている。

8/11/2023, 2:29:32 AM