書上 創

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桜の散る窓辺、白いカーテンが揺らめく病室。
穏やかな春の日差しに照らされる、やせ細った父の顔。
余命残りわずかな父の、数少ない面会の日。

私は、小さい頃から男手ひとつで私を育ててくれた父親が大好きだった。

『お見舞いに来たよ、パパ。』

末期の肺がんになった父は、見る間に痩せこけていった。
それでも変わらない、優しい父の眼差し。

「今日も会いに来てくれてありがとう、最近調子はどうだい…?」

父は体を壊しても、私の心配ばかり。
最後まで、そんな人だった。
安らかな瞳を開けたまま、窓の桜を見つめて、息を引き取っていた父。
納棺の時に、そんな父の棺の中に、桜の枝を一つだけ入れた。
父は、私に「さくら」と言う名前をつけてくれた。
桜の花が大好きな父からの、贈り物の名前。

3/15/2024, 8:16:30 AM