胸の鼓動
あの日は玄関の鍵をかけていなかった
バタンと車のドアを閉める音がして
窓から覗くと
勢いよく玄関に来る人影が見えた
私は咄嗟に走った
玄関が開いて
一瞬家の中の空気圧が変わるのを感じたが
その時私はリビングのテーブルを横切り
走ってお風呂場に向かっていた
危機一髪でお風呂場に身を隠せたが
心臓の鼓動が速く大きくなるのが分かる
誰かが勝手に家に入ってきたから
恐怖で 息を潜めて耳を澄ます
何分か経った
シーンとしている
扉の隙間からそーっと覗いてみた
背を向けた大人の男が立っているのが見える
またそーっと顔を引っ込めて
見つからないよう祈った
まだシーンとしている
また覗いてみた
誰も居なかった
あれは 未だ誰だったのか解らない
ただ
1つだけ無くなっていた物があったから
現実の事だったとは思う
本当 あの時心臓どきどきだった
9/8/2023, 11:45:42 AM