小さな葉っぱ

Open App

※二次創作注意
※ワルイージ×ロゼッタ


「まあ、奇遇ですね」
 たまには昼に外食でも、とやって来たキノコタウン。
目ぼしい店を探して彷徨っていると、横から凛とした声を掛けられた。
立ち止まり声のした方を見る。ガニ股猫背の自分とは違い、しゃんと伸びた背筋からは気品が漂っていた。
 涼しい色のドレスが今日も眩しい彼女は、挨拶がてら丁寧に頭を下げる。
「そ、そんな畏まられるとなんか調子狂っちまうぜ。で、今日はどうしたんだ?」
「風を辿ってここまで来たのですが、偶然貴方をお見掛けしまして」
 不思議な事を言う人だ。
 とはいえ彼女は、この蒼い星に並々ならぬ思い入れがあると聞いた事がある。
 銀河という自然の中で暮らしている事を考えれば、あてもなく散策に出掛けるというのもなんだか頷ける。
「ワルイージさんはどちらまで?」
「昼を外で食おうと思ってな。良い店がねえか探してるとこだ」
「ならば貴方も風まかせにお店選びをしてみてはいかがでしょう。きっと素敵な出会いがあると思いますよ」
 再び頭を下げた彼女が去って行く。
『だからお辞儀はいらねえ!』と開きかけた口を噤んだ。風を再度辿り始めた彼女の背中は本当に“今”を楽しんでいるように見え、邪魔をしたくない――ただ単純に思った。
「……あんたと以上に素敵な出会いはねえさ」
 そんなキザったらしい言葉を空気に混ぜる。聞こえない距離だという事は分かりきっていた。
 ポケットに手を突っ込み、握ったものを引き出す。
「オレ様は風よりこっちだな」
 手を開くと一枚の銀貨。指に乗せて真上に弾く。
 辺りに響く金属音は、彼女のドレスと同じ爽やかな色をしていた。


(おわり)

5/15/2023, 6:45:45 AM