まっかな秋の空に照らされた川をひとり眺めていた。僕のお気に入りの場所、河川敷。学校で僕に暴力をふるうような人たちは、身近にある絶景を見つけることが出来ないらしく、学校外で絡まれることは無かった。手にできた真新しい痣をじっと見てから苦笑した。それを見るのも気持ち悪いので、向こう岸で秋風に撫でられさらさら揺れる大好きなススキを見つめていた。ふと、僕の肩を誰かが叩く。
「よっ!また来たよ!君はいつもここにいんね」
近所に住む同級生の女子である。最近よくここで会うので、少しの間同じ時を共有させてもらっている。明るく誰にでも優しい彼女と、いじめられっ子の僕。雲泥の差である様な僕たち。彼女は今、両親の不仲に悩んでいるらしく、当たり前だけど普段強いひとにも弱くなってしまうときがあるのだと思った。しばらく談笑してから、彼女はいきなり走り出して、橋を渡っていった。向こう岸についた彼女は満面の笑みでこちらに手を振る。ススキと戯れる彼女を見て僕も笑顔になる。つらさが省かれることは絶対にないけれど、こんなに楽しい時を過ごせるならば、それでいいかもな、とも少し感じた。
「ススキ」
11/10/2021, 1:45:15 PM