haru

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この程度なら濡れながらでも帰られるのに。そうしないのはもう少しこうしていたいからかしら。

薄淡く光る曇天。
足早に横断歩道を渡る人達。
同じ制服、制服、制服。
予報外れの雨はそれでも控えめに、生徒達の足を急がせる。立ち止まらせる程の強さも無く、音さえもしない。
うわー、まじか。
駅まで走れば大丈夫でしょ。
いけるいける。
よし、いくかあ。
笑いながら外に飛び出す男の子達。一体何が可笑しくて。
そうして私はもうずっと、生徒玄関でこうしている…一体何が楽しくて。濡れて困る理由なんて無いのに。
いつもなら遠くに聞こえる運動部の喧騒も聞こえない。人がいなければ静かなのだ、ここは。
ただの雨なのに、ね。

なんだかもどかしくなって

私はようやく歩き出す。
雨なんか降ってないみたいに、いつもの速度で。あえて、あえて。
ちょっとだけ、皆と違う風にしてみようかなって。
違うのに、いつものように、だなんて変だけど。

雨は温い
私を少しだけ湿らせる
その程度だったよ。



(柔らかい雨)

11/6/2023, 2:43:29 PM