「たとえ間違いだったとしても」
夜中の学校は高校生活の醍醐味だ。
中学時代ならば暗くなる前にはすでにみんな学校を出ていて、わたしにはその雰囲気は残る教職員の影が職員室の蛍光灯に照らされ動いているんだろうか、といまいちはっきりしないものだった。
高一の五月、高校生にはなったものの、そこはわたしにとって本当にいきたかったところではなく、俯いた感情が心にまだ残っていた時期。そのときは部活帰りだった。程よく親睦が深まった同級生たちのなかで、わたしは言った。
「夜にこうして校舎のあたりをみんなで歩いているだけでもなんだか新鮮だわ」
友人たちは途端にセンチになったわたしに一瞬目を丸くしたあとに
「あ、確かに、考えもしなかったけど、そうだ。中学時代より忙しくなるね」
と表情をほぐす。
「こういう景色は新鮮で癒されるわ、部活後やしね!!」
「高三とか普通に大人だよね、ついてくのキツい」
中学時代は中学生と一緒に部活をしていたと思うと、高校生の部活は本戦に入ったような緊張感がある。
「てかさ、流されかけたけど景色そんな綺麗じゃないくね笑」
俯瞰してみれば、その通りかも。月の形も中途半端で、流れる川は少し汚れている。校舎のはげかけた色が夜闇に浮いて見えて正直不格好だ。でも、よかった。不格好でもさまになることだってある。不安だった高校生活に、安堵の灯がともる。
悩んだ末に出た答えでも、間違いか正解かは全くわからない。でも、それに気づくころにはまた別のことに夢中になっている予感がしていた。
4/22/2024, 7:04:16 PM