言の葉

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     「愛」     

3月31日深夜、卒業以来静かだったクラスLINEが間抜けな音で鳴った。

 東京組は4月1日の始発で出発決定
 見送る人は駅にヨロ!

「明日か…」
スマホでバイトの予定を確認しつつ、
なにか気になる。

3/31 23:30

確か、新幹線に乗り継ぐ最終は、24:01発。 
あたしはコートのポケットにスマホとチャリのカギをつっこんで飛び出した。

   違うかもしれない
   でも
   あいつは
   バカでお調子者で
   さみしいのが嫌いなあいつは
   やるかもしれない

荒い息でチャリを降りて、無人駅のホームに駆け込む。

   いるわけない
   いるわけない
   でも
   でも
   いるかもしれない

ホームに立っているのは、何度も見た横顔。
「こ…この…ばかっ」
ぜーはーぜーはーのあたしがにらむと、
きまり悪そうに視線をそらして
「バレると思わんかった」
ぼそっと言った。

見送りが来る始発まで、
卒業以来の日常をぽつぽつ話した。
あいつは「へぇ」とか「それで?」とか、
いままで通りだった。

あの夜、過ごした時間は、
特別で、でももう終わってしまった時間だ。
ただ、あいつが意図したメッセージ、
あたしが気づいて駅に駆けつけた応え、
はっきりした形はなくても、
愛が、あったんじゃないかなぁ

春が来るたび、思い出す。

#形のないもの

9/24/2024, 3:00:15 PM