篝火

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伝えたい事がある。

そう言って玄関の前に現れた彼は、あの日と変わらない姿をしていた。

顔を見て伝えたい、開けてほしいと言う彼に思わず鍵を開けてしまいそうになる。
でもそれは駄目なのだ。何度も何度も己に言い聞かせ、できない、と答えた。

インターフォン越しの彼はそうか、と呟くと、そうだよなあ、と寂しそうに笑う。

ああ、その表情だって、あの日と何も変わらない。
今すぐ扉を開けて、彼を抱きしめたい。
彼のぬくもりを感じたい。
だが、それは最早永遠に叶うことがないことを、私は既に知っていた。

ゴメンな、大好きだよ

消え入るような声にハッとして、俯いていた私はかじりつくようにインターフォンの画面を見る。

彼は、やっぱりあの日と同じように笑って、それから夜に溶け込むように消えていった。

2/12/2023, 12:04:59 PM