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【鳥のように】



「えー……お祖母様のこと?」
上を向いた視線が、左から右へきょろりと動く。
「自己肯定感の高さも、半端ないよ。強くていいよね、色んな意味で」
グラスの氷を、ストローでぐるぐるとかき混ぜるだけかき混ぜて、ため息をつく。
「『鳥のように自由に生きたかった』とか! 言うけど! いやいやいや……好きなことやってストレスフリーだよ。周りにいる人間のこと、なんも考えてない。迷惑だって気づいてない。お姫様も大概にして欲しいよ。大した家柄でもないのに。時代錯誤もいいとこ」
つけつけ言って、さっぱりしたのか、グラスのアイスティーを一気に飲み干す。
「ごめん、いつもいつも。お祖母様のことになるとダメだ」
「いや、聞いたのこっちだし」
「で、なに? ラスボス、攻略するの」
半ば冗談で尋ねると、苦笑いが返ってくる。
「まったく、倒せる気がしない」
「だよね〜」
ボヤくと、「『お祖母様』って言うのな」と面白そうな顔になる。
「あぁ、そこ? 本人の希望なんだよ。外にいてもついクセで。でも、攻略されたらされたで、悲しいかな」
「しないって」


8/22/2023, 9:51:37 AM