カオル

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あなたには、きらりとするものがある

そう残してくれた先生。
長い髪の、背の高い、ちょっとハスキーな
眼鏡の似合う、先生。
みんなは、こわい。とか、暗くてつまんない。とか
言っていたけど、私は先生の授業が好きでした。
淡々と紡がれる言葉は、国語の授業にしては、妙に薄くて。文章を味わえ、感じろ、なんて野暮な横槍もなく。自由に考えられる時間でした。
時々答えを求められる問は、なかなか難しくて、みんなは、わかりません。しか言わなかったけど。四苦八苦して答える私には、いつものハスキーな声で、

当たらずとも遠からず、かな

お決まりのセリフを言ってくれました。
否定しない、ヒステリックに正解を押し付けない。
国語の無限さを、先生に教えてもらえました。

卒業アルバムに一言下さい、差し出した真っ白のページの隅に、書いてくれた言葉を

私でいいの?と、珍しく表情を変えて、サインペンを持ち直してくれた横顔を

私は忘れずに 

教師になりました。
先生みたいなクールな教え方はできないけど、
私は今日も、必死に考える生徒に言うんです。 

当たらずとも遠からず、かな

そして、別れゆく生徒には

あなたには
きらりとするものがある 
と。

9/5/2023, 4:56:16 AM