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「柔らかい雨」

読んでいた小説から目を離し、座っていた軒先から庭に目をやる
雨の匂いがしたからだ

でも、空は明るいままだ

しばらくすると、ポツポツと庭石が濡れ始める
花も雨粒が当たる度にユラユラと弾んでいる

「狐の嫁入り……か?」

小春日和の今日、どこかの誰かが
幸せになる先触れだったのかなと思えば、
突然の雨も存外悪くないものだ

ふわっと金木犀の香りが濃くなった

小説の中だけじゃなかったな
現実だってこんなに愉快で幸せが充ちていた

だから、しばらく幸せな心地を楽しんでみることにした

11/6/2022, 11:24:01 PM