ぺんぎん

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手先にふれた半開きのペットボトル、舌をざらりと浮かすいろんな色したちゃちな飴
喉もとに後ろめたさがはしる、早く飲み込むから、もっとくださいや
ああ素敵、一回私は死んだあと、シロップのプールで泳いでるみたいだ、ここは楽園かな
いいや違う、シロップは、嘘みたく苦しい、くすぐられた胃がざわざわと喚く、甘さに殺されそうになるなんてひどくたまげた、ちがう、私は一回死んだはずだ、ああ蚓が、蝿が、蜘蛛が、羽化したての蛍光色した蛾が、鈍い鳥肌よりはやくにてのひらで生まれた、やめろ、集るな、いやだいやだ、私から生まれるのは奇麗な蝶々、うんそれがいいの、わかったならその飴ちゃんもっとちょうだい、奇麗なものをよこせと蔓延るのは可笑しいの、ああ涙が出そう、ずっと泣いていれば、私からも真珠がとれるのかな、ああ、違う虫、虫、てのひらいっぱいの虫、シロップにも漬け込んでいく、私の楽園を壊すんじゃない、やってきたのは奇麗な蝶々、この際ラムネでもなんでもいい、狂わせるもんをくれ、さっさととってこい、いいや、嘘です、もっとください、お願いします

11/4/2022, 11:42:35 AM