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紅茶の香り


「ただいま」
「おかえりー」
「ん?いい匂いだな、何これ?」
「でしょ?ルームフレグランス変えたの。紅茶の香り、流行ってるんだよ」
「へぇーそうなんだ」

3年付き合った彼とは同棲を始めたばかり。結婚について話したりしてないけど、お互いに意識している(と思ってる)。
毎日互いに忙しい日々を送っているけど、私は朝から晩まで彼といられるのが嬉しくて仕方ない。

「はい、おみやげ。晩酌の時食べよう」
「え、たこ焼き?また?」
「好きじゃん」
「好きだけど週3でたこ焼きは飽きるって。もっと他にもあるでしょ?女子ウケしそうな可愛いスイーツが」
「ブーブー文句言わねぇの、ほんっと文句ばっかだな。ブタさんになっちゃうぞ、あ、ちっちゃいから子ブタか」
「怒るよ💢…ブヒーー」
「笑、子ブタちゃんご飯にしてー」
「ブヒブヒ」

くだらない軽口を交わす毎日。
起きても寝る時も、ご飯食べる時も歯磨きする時も大好きな彼がいる。
そんな幸せな毎日。

ある朝、目が覚めると左の薬指に指輪が…。
「もーーー、アイツってば何してくれるのよーー、ドラマの見過ぎだっつーの……」
嬉しくて陽にかざしてキラキラする指を眺める。
「…綺麗」
笑みが止まらない。

でも直接渡してくれてもよかったのになー、プロポーズしながらさー、指輪はめてくれてさー、感動の涙のやつー。
よし、帰ったら文句言ってやろ。


彼が消息を絶ったのはその晩のことだった。


end

10/27/2024, 11:48:49 AM