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鳥のようにどこまでも続くような大空を飛んで行きたかった。だけど、この狭く窮屈な世界から飛び出したいと何度も思うのに、不変で退屈なこの日々に身を委ねている方が確かに生きやすい。いつもの通学路、いつもの駅、何も変わらない風景の中を只々足を交互に動かしているに過ぎない。何の刺激もない毎日のせいなのか自分自身の感動が朽ちてしまったせいなのか分からないが、生きている意味が分からなくなる。ここ最近、ぼーっとしている時間が多くなり、頭の中がどこか靄がかかったみたいにふわふわとしている。疲れが溜まっているのかもしれない、と言ってもほとんど何もしないで過ごしているので疲れがたまるということはないだろう。まあ、何もしないと逆に疲れるとも言うけど。
「家に帰ったら何しよ…」
何も纏まらない頭で帰宅後の予定を考える。も口に出すだけで特に考えはしなかった。
「ただいま〜」
玄関をガチャっと開けて、乱雑に靴を脱ぎ捨てる。しかし、誰も注意するものはいない。今となってはそれが当たり前だ。昔はいたのかって、そりゃまあ俺を産んだ人がいればそういうところもちゃんと教育してくれてたんだろうけど、生憎、記憶の範囲外だ。まあ、俺の両親は俺が4歳のときに莫大な借金を残して、夜逃げしやがった。しかも俺を売った金でな。惨いと思うが、それが両親なりの選択だったのだろう。もう別に過ぎたことなのだからどうでもいい。

8/21/2024, 12:32:16 PM