お祭り
橙色の丸が連なる暗闇の中で,声はさざ波のように揺らめいている。遠くで誰かが笑い,それに誘われるように周りの声が耳をすり抜けていく。
300を超える日にちの中でたった3日。寂れた町が生き返る夢のような時間は,いつの間にか人に呑まれてしまった。2年,6年,3年と時を重ねて増えた思い出と人の記憶。
屋台を過ぎて,人を見て,かつての記憶を煮詰めたような場所を出る。
彼は数学が得意だった。彼女は誰もかなわないほど走るのが速かった。あの子はいつこの町に帰ったのか。そこにいた同級生がかつてわたしを笑った声はどこまで付いてくるのか。
全てを忘れて踊り明かす泡沫の灯りはただ暗闇に貼り付いて,途方もない記憶を呼び戻しただけだった。
7/28/2023, 6:20:07 PM