夏野

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遠い日の記憶


暑い夏の日はファストフード店に限る。
とてもではないが、家で作業する気になれなくて、外に出て暑さにげんなりして、慌てて店内に逃げ込んだ。

隣に座った少年が、キョロキョロ見回していた。
視界の端に入る少年が気になりはしたが、わたしは仕事をしていたので、黙々とタブレットを操作した。

なんか微笑ましい。かわいい。
このくらいの時期の子供って、何しても可愛いんだろうなぁ。

仕事に集中しなきゃ、と思いつつも、視界に入る可愛い生物を考えてしまう。

少年のお母さんが後からやってきて、「大人しく座っていてね」と、恐らく注文するためにカウンターへ向かった。
少年は、大人しく、キョロキョロした。
確かに座っている。偉いな、と思う。

「パソコン開いてなにしてるの?」

隣から聞こえるトーンの高い声。
なんだ、天使は声まで可愛いのか。
暑さと仕事のストレスで狂いまくった頭がおかしい気がする。
パソコンじゃなくて、タブレットだよ、と言いそうになったけど3歳くらいの子供相手にそんなこと言えない。

「お仕事してるんだよ」
「お仕事?ここご飯食べるところなのに?」
「ご飯を食べたから、ひと仕事してるんだ」

トレーに残った包装袋と、飲みかけのコーヒーのカップ。

「ふぅん」

そして少年の興味は尽きたらしい。
母親が置いていったであろうスマホを触り始めた。
そんな様子も可愛くて表情が緩む。


わたしが子供の頃は、とても知らない人と、隣の席だからって話しかけたりはできなかった。多分今も出来ないし、やらないけど。
話しかけたり瞬間にわたしがやばい人になりかねない。
今の現代、怖い。
男が男に、女が女に、でもセクハラって成立するし、訳わかんない世の中。

でも、可愛いは正義は、今も昔も変わらないよなぁと、そう思った。

7/18/2024, 4:28:49 AM