クジラになれないイルカ

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寂しさ____

2023/12/19

1人でいる子。椅子に座ってじっと本と睨めっこしている子。本当は読んでるんだろうけど、私にはそうとしか思えなくて。心のどこかで「あぁ寂しそう」だなんて思ってる自分がいて。

だから、1人でいたり、あまり話せないような子にたまに話しかける。そうやって誰か1人の人に話しかけてる自分に対してどこか、あぁ私って優しいな、なんて感情がある。自分が上でいられる、自分が優しくていい人でられるのが心地いいと思ってしまうんだ。

「友達が多くて明るいのに、私たちみたいな日陰にも気づいてくれるの。クジラだけだったよね」

高校を卒業して、たまたま中学の時の友達と会った時にその言葉を言われた。


違う。そうじゃない。私は、本当は最低の人間で、酷い人間で自分のことしか考えてないようなやつで。そんな言い訳を言葉にした。感謝されることじゃない。逆に責めてほしい。その方が何千倍も楽だ。

それを口にしてはいけないのはわかっている。でも、自分でもなんて言ったかはあまり覚えていなかった。ただ自分はそんないい人間じゃないということを伝えたかった。

「で?」

小さな小さなガラスでできたハートにフックが引っかかってヒビが入った。涙が溜まる。

「で?」

更にガラスみたいなハートをカチカチと小さな音を立てて何回も系で強く引っ張る。涙が出る。

「えっ、そうやって仲良くなるのは普通の自然になる友達と何か違うの?」

違う。違う、はず。だって、罪悪感から生まれた友情と利益から生まれた友情は違う。でも、それってどっちも友情なのかな。言い訳をしたいのに、違う理由を言いたかったのに、出た結論はどっちしろ最低な友情だということだけ。

「そっちの勝手な罪悪感で、こっちのいい思い出塗りつぶさないでよ」

ガラスに開いた半径5ミリぐらいの穴にフックの糸が思いっきり引っ張られて割れそうになる。涙が溢れる。


そっちの勝手な罪悪感とこっちのいい思い出。

私から生まれた罪悪感はあっちにはいいことになっていて。初めて、考えが止まった。本当の本当に答えが出ないと思ったから。




優しさ、優しいふり。

何が違うかなんて相手の捉え方と自分の意思で変わってくる。そんなのわかってる。でも、私や楓にとっての優しいって言われることは全部優しいふり。


クズで最低みたいな私たちに取っての優しいふりをして、勝手に自己肯定感上げて、また優しいふりをして勝手に罪悪感を感じる。


最後に、「クジラ、1人で寂しそう」と言われた。


自分が思っていたことなのに、言葉にされると罪悪感とはまた違って心の痛さがあって。自分が思っていた罪悪感の言葉を他人から言われることが1番苦しいのかもしれない。自分を責めて出る涙と他人から責められて出る涙は雫の形が全く違った。


そして、他人から「1人で寂しそうだから」と自分が優しさのふりをしていた魔法の言葉を呪いの言葉だと言われて、今更気がついて、一番最低なのは私だったということにやっと気づいた。







12/19/2023, 3:03:29 PM