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風に乗って遠くに行きたい。綿毛のように何処に行くかも気まぐれで、鳥に食べられるかもという恐怖を感じつつ、それでも四六時中フラフラしている自分によって遠くに行きたい。場所を指定できるほど偉いやつでもない。ただの綿毛だからだ。ただもしも場所を選ばせてくれるとしたらどうしようか。どこに行ってみようか。そうだ、昔行ったセブ島に行きたい。水平線があることが当たり前、3日見てれば飽きると言っていた水平線。僕はそれをスクリーン越しにしかどう頑張っても見ることができない閉ざされた世界にいる。あぁつまらない。インターネットは私に向かって喋りかける。四六時中誘惑してくる。ポルノ、誹謗中傷、何でもござれの闇鍋をつついて13年。私はようやく嫌気が指してきた。もうつかれた。君の顔はもう見たくないとここ最近毎日言っている。それに対して水平線はどうだろうか。青く透き通り空気が澄んでいる美しさだけを私に与えてくれた。Hかっぷのおっぱいも芸能人の不倫ニュースも教えてくれない。彼は何も知らないトーシローかもしれない。でもそれでいいんだ。何も言わずそばにいてくれる。それだけの存在がどれだけ素晴らしいものなのか、今の私にはよく分かる。広がる当たり前の世界にもう一度行ってみたい。きっとそこにはまだ疲弊仕切っていない、馬鹿げた夢を人前で話していた高校二年生の私がいるはずである。あぁ、もう一度セブ島に行ってみたい。

4/30/2024, 4:26:02 AM