捨てられなかった携帯電話
たった一言のあなたの声を聞くため
留守電に残る、雑踏の中の声を
もうどこにもつながらない携帯電話を
繰り返し充電しては
あなたの声を聞いた
あれからもう10年が過ぎ、気づけばあなたの声を
求めていない私は
幸せなのかな 満たされているのかな
充電されない携帯電話は、もう何もかも空っぽで
あなたの声は もう 聞こえない
夏の風景。この日々は続かないと知っていたあの日
冬の風景。もう今日までとわかっていたあの日
また、電話する
もう、電話なんてないと飲み込んだ春
些細な留守電のメッセージが、私を支えてくれた
私は今、あなたの声などなくとも
生きている
9/3/2023, 12:40:47 PM