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鳥籠の中の鳥のようにピィピィと歌い続けてあげよう

私は空をとぶことができるらしい。
私を鳥籠にいれた生物がそう言っていた。
そしてそれは自由であることの象徴なのだと。

不自由を強いたことへの罪悪感なのかどうか知らないが、たまに広い部屋に放たれる。
私はただじっとその場にうずくまる。もっと自由にしていいのよと眼の前の生物は言う。

私にはそれがわからない。

鳥籠の中でも羽ばたくことはできるし、どこともしれない場所を覗き回るような好奇心も、私にはないからだ。
頑丈に閉められた窓の外を見てみれば、真っ黒な、私より大きな翼をもった何かがギャアギャアと嘶いている。

ああ恐ろしい。はやくあの鳥籠に戻してほしい。
私はあの中で、私のことをまるで理解しないこの愚鈍な生物に、歌を贈るだけで充分なのだ。

8/21/2023, 1:22:25 PM