六花

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 「……どこへ行こう……」

 私は今、人生最大の選択をしているかもしれない。
 なんの選択? 結婚? それとも引越し?
 いいえ、《どこの異世界へ行くか》です。

 「どこの異世界へ行くのじゃ? 迷ってないで早くしておくれ、鈴歌殿」
 
 神様はソファーに座り、ポテトチップスを食べながら聞いてくる。

 「悪役令嬢になれる世界、聖女になれる世界、どんな人からもモテる世界、などなど色々あるぞ? さて、どれを選ぶのじゃ?」

 どの世界にも魅力を感じない。
 そんな世界よりも……
 私は拳に少し力を入れて、神様に言った。

 「私の彼氏だった“律”と、もう一度……もう一度会える世界はありませんか?」

 律とは幼馴染であり、彼氏だった。
 だが、事故に遭い亡くなってしまった。
 数日前までは一緒にご飯を食べたり、笑い合いながら話していたのに。

 「では地球に似た異世界に行くよう手配しよう。その世界には律の“生まれ変わり”がいる。生まれ変わる前の 記憶を蘇らせておくから安心せい」

 もう一度会える……
 そう思うと一筋の涙が頬を伝った。
 神様、ありがとうございます。

 「鈴歌を異世界に行かせよ‼︎」

 神様が黄金に光る杖を鏡に向かって振ると、とても眩しい光が私の目を射る。

 そして、何かに吸い込まれる感覚がした。
 おそらく、今は異世界に行っている途中なのだろう。

 「次こそ2人で幸せになるが良い」

 小さな声だが神様の声がした。
 
 ……はい、幸せになりますよ。
 ……もう一度機会を与えてくださり、ありがとうございます。

 私は心の中でそう呟いた。

4/23/2025, 9:50:01 PM