#佐橋と鷹宮 (BL)
Side:Hayato Takamiya
最近、親友の様子がおかしい。
そう感じたのは1週間前のことだ。
あいつは何かを言いかけてやめた。たったそれだけのことだけれど、オレはその理由が気になってしょうがない。
「佐橋〜」
「…」
「碧生〜」
「…」
「佐橋碧生〜!昼飯の時間だぞ〜っ!!」
「…あ、ごめん鷹宮。ちょっと考え事してた」
絶対嘘だ。オレにはこいつと10年つるんできた経験値があるから、オレは既に確信している。
無表情でいることが多い佐橋だけれど、オレには分かる。今の佐橋は何かオレに隠し事をしていると!
「佐橋〜、オレに何か言うことあるだろ?」
「…え、いきなり何の話だ?」
「ほら、この前オレに何か言いかけたじゃんか?」
「あぁ…あれは本当に何でもないって」
「誤魔化すな〜っ!」
「…」
佐橋は何故かさっきからオレの方をちっとも見ようとしない。心做しか…思い詰めているように見える気がする。
オレはその理由が知りたいのに、こいつはいつも隠し通そうとする。
それが何だか…もどかしくて、少し腹が立つ。
「何だよ〜、そんなにオレが信用できないってことか!?」
「…違う」
「じゃあ何で言わないんだよ〜!」
「…言いたいけど、言えないんだ」
「ほれ、お前の親友鷹宮颯人は今更お前が何言ったってバカにしたりしないぞ!ほら、言ってみ?」
オレの必死の説得の末、佐橋がようやくオレのほうを向いてくれた。
長い前髪の間からオレを静かに見つめる佐橋の表情には、まだ躊躇いが見える。
「鷹宮…」
「ん〜?」
「…本当に、僕のことをバカにしないって誓えるか?」
「誓う!」
男の誓いを交わしたその瞬間、無感情だった佐橋の表情が少し…和らいだような気がした。
どこか覚悟を決めたかのような…こんな表情の佐橋は初めて見た。
「…ずっと好きだった」
「なーに言ってんだよ、オレは今でもお前が大好きだっつーの!」
「…違う、そういう意味じゃなくて…」
「…ん?」
…ええええ嘘だろ〜!?
約10秒かけて佐橋の真意を理解したとき、オレは階段から転げ落ちそうになった。
「…悪い、やっぱりそういう反応になるよね。前言撤回する、忘れてほしい」
「いや待て待て待て!待てーい!! オレがまだ何も言ってないのに退却しようとすんな!!」
屋上へ逃げようとする佐橋を慌てて追いかけて、オレは何とか佐橋の腕を捕まえることに成功した。
「…あんなこと言ったばかりなのに、これからもずっと僕と一緒にいてくれる…のか?」
「当たり前だろーが!だからオレの前でくらいチキン発揮しなくていいんだぞ!」
「…そういうとこが好き…」
「!?」
佐橋の心の奥深くに眠っていた本音を聞き出した結果、オレたちは2人揃って次の授業に遅刻した。
案の定同じクラスの奴らには大笑いされてしまったけれど、後悔はしていない。
【お題:これからも、ずっと】
◾︎今回のおはなしに出てきた人◾︎
・鷹宮 颯人 (たかみや はやと) 攻め 高1
・佐橋 碧生 (さはし あおい) 受け 高1
4/8/2024, 2:04:28 PM