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「またね、あずさくん」
僕は、君のような人を助けることが夢だ。
いつも笑顔で、嫌なことなんて気にしない、それでいてどこか悲しそうな、そんな少女。
夕暮れに振り返る少女は、僕の方を見て大きく手を振っていた。

一昨日は、君からおすすめされたリップバームを試してみた。唇が乾燥していたから、少し気になっていたんだ。
「しっとりするでしょ」
塗ってみた唇はハッカですーすーしたし、鼻も特有の感覚がくすぐったかった。
これも私達の秘密だね、と彼女は言った。下校時間は過ぎていたが、図書室に誰か来る気配はなかった。
図書室のさ行の棚から一冊、手に取りすぐ僕に見せる。
誰も知らない、僕たちだけの"絵本"。
それを皮切りに、僕は君に赤い印をつけた。

昨日は、暖かい感覚と生ぬるいヌメヌメとした感覚が、僕を襲う。真っ黒い、大きなものが僕を断頭台まで突き動かしていた。
「大丈夫?」
非表示にしたはずの電話が、明るくついていた。
あぁ、いつでも君は僕の心の支えなんだね。
少女は悩みながらも、たった一人だけの男に懐いていた。
手を取って。

1年後、
私は君のような人を助けることが夢だったんだ。
そうだね、許してほしい
君に秘密を打ち明けてから、私はあなたを求めるようになった。
じゃあ、今から行くね。
たった一瞬で、君の場所へ




という夢を見たのさ!
こういった夢を見たあずさは、少女のもとへすぐに駆けつける。
「ゆうひ!」
間一髪、ではあったものの、少女の破滅をあずさが防ぐ。
「どうして…」
そうつぶやいて、へなへなと座り込んだあずさが優しく包み込む。
「自分で決めた未来は裏切らないから」
ごめん、とあずさとゆうひの発言が被る。
「「あはは!」」
笑いきった2人は、新しい未来へと歩みを進めることになる。
『1年後、私達はどうなってるかな?』

5/8/2024, 1:58:29 PM