朝から雨が降り、窓の外に見える桜は何処か寂しそうな顔をしていた。
「私は、明日死ぬ。」
毎晩そう呟いては、今日もまた目を覚ます。
私が小学生の頃に母が交通事故で他界し、それから父は一切喋らなくなった。
中学に上がった頃には周りから酷く虐められ精神的にも耐えられず不登校が続いていた。
インターホンが鳴り玄関を開けるとそこには幼馴染みの三奈子が立って居た。
私が不登校になってから毎日家に寄って翌日の持ち物や連絡をしてくれる。
「元気なさそうだけど大丈夫?風邪でも引いた?」
と優し気に微笑みながら聞いてきた。
私は戸惑いながらも
「ううん、大丈夫。元気だよ、、」
と苦笑いで返した。
玄関先で暫く話した後、三奈子は家へ帰った。
毎日、毎日、毎日…そうやって話しに来てくれるのが嬉しいのか嫌なのか自分には解らなかった。
「はぁ、、」
私は酷い頭痛に襲われ玄関先で深く溜息を吐いて屈んでいた。
「カチカチカチ…」
リビングにある時計の音が玄関先まで聴こえる。
家の中は静寂に包まれまるで、深い水の底に落ちてしまったかの樣に緩やかに時間だけが過ぎて往った。
気が付くと辺りは暗くなり時計の針は3時間程進んでいた。
いつの間にか眠ってしまっていたのだろう。
窓の外を見ると、そこには月も見えないほど光る夜景が拡がっていた。
すると、瞳から自然と涙が溢れ必死に拭き取とり止めようとするが涙は止まらなかった。
「周りに何て言われるか何をされるか分からない…怖い怖い怖い帰りたい帰りたい、、」
そんな恐怖心を必死に抑え自分の席に着く。
「おはよ。」
顔を上げるといつもと変わらず優し気な笑みを浮かべた三奈子が立って居た。
「学校来れたんだね。」
と三奈子が続ける。
私は
「うん。ちょっと来てみようかなって、、」
とまた苦笑いで返す。
三奈子は
「偉い偉い。」
と言いながら少し生暖かい手で私の頭を撫でた。
たった3ヶ月ちょっとの間だけなのにとても懐かしく照れ臭かった。
他の生徒も登校し教室に入ってくる。
私を虐めていた数人の男子グループの生徒も登校して来た。
直ぐに私の前に来たが何もして来ない。
口元をよく見るとボソボソと何かを呟いていた。
耳を澄ますと
「ごめん、ごめん。」
と何度も繰り返していた。
彼の目は涙で滲み頬は赤くなっていた。
学校での虐めが無くなり私はまた毎日登校する樣になった。
雨が上り澄み切った空には大きな虹が掛かり道にある水溜りを跳び越える。
誰しもが一度は経験があるだろう。
数人の友達と思い付きのゲームをしながら下校をする。
私はそれがとても楽しかった。
そして、私たちは友達の証として合言葉を決めた。
「これから何があっても私たちはずっと友達。」
こんな遣い古された臭い台詞でも
「何も無いよりはマシ、、」
か。
これからもずっと、私は今日を生きる。
4/8/2023, 5:54:19 PM